【Chapter:02 Page2001】

 

 

 

  時代は2247年。


 すでに人間は地球の外にまで手を伸ばしていた。

 火星や木製衛星の国家組織――【外惑星連合軍】



 それに対抗するために、地球で大小200を超える国家同士が手を組み――やがて五つの勢力にまとまっていった。

 ひとつはユーラシア大陸の国家を束ねた【超人同盟】

 もうひとつは――ヨーロッパの連合国家【REU】

 300年前の世界大戦から東西に分断された極東の島国【大日本皇国】と【ディストピア】




 そして――【
再統合教団リ・ユニオンオーダー

 この国家の特筆すべき点は、ひとつ。



 人間が――ひとりもいない。

 国をまとめているのは人間ではなくロボットなのだ。



 ロボットでありながら、神を崇める新興宗教財団。

 その中心には――
Iyesイエスシリーズと呼ばれる優秀なロボットたちが存在する。


 世界最高水準のロボットたち。

 人に近しい骨格。
 人に等しい知能。

 何より――【彼女】らの性は……。



 彼女らは神の子。
 
けがれを知らぬ乙女たち。 






 
……本当に?



 


 

【Page2001】 First bite

 


 

 

 
 

 豪勢なつくりの部屋。
 備え付けられた家具も、そこに転がっている備品でさえも、そのすべてが高価なものばかり。
 清掃も行き届いていて、ちょっとした高級ホテルを思わせる。

 だけど――ベッドのシーツだけはひどく乱れていた。
 まるで、売春宿のように。
 
 

「……ふぁ、っん…や、ぁん…っ!」
 絹のシーツを手で波立たせながら、女は濡れた舌を出してはしたなく喘ぐ。

 足首をつかまれ天にかかげられたまま、足の間からあふれる蜜を舐めしゃぶられて。

 吐き出す吐息は熱い。
 陰毛のついた口で舐め取られていくのを意識しながら、彼女の意識もまた熱を帯びていく。
 すでに全身をその舌で味わわれているにもかかわらず、この攻めだけは別格だった。
 舌先で芽をつつかれ、舐められ、ほじくられて、そのたびにたとえようのない波が彼女の理性を剥ぎ取っていく。
 まるで、彼女の願いを叶えるかのように。
  

 一糸まとわぬ姿で足を広げた――お世辞にも上品とはいえない格好をさせられているけれど、彼女が気にした風もない。


「…………」 


 そうでなければ――仰向けになって無防備になった男にまたがって、その熱い猛りを――自分の足の間に導いたりなんて決してしない。

「……っ…ん……あ゛ぁっ! ……入っ、た……」
 色を含んだ声。快感に酔いしれている瞳。
 蜜でたっぷり濡れそぼっている彼女の秘部は、男の熱い猛りを奥まで飲みこんでいった。

 甘い電流が全身を駆け巡って――もうどうにかなってしまいそう。

「…っく、あ…っは……」
 本能のおもむくままに、彼女は自分の腰を振る。
 愛しい人とひとつになって、激しく淫らに泣き喘ぐ。

 頭の心が熱い。おなかの奥が疼いて仕方がない。
 もうその瞳に【感情】はない。あるのは【感覚】だけ。

 彼をいっしょになりたいという、熱く激しい欲望だけだ。 
 
「ひぁんっ、やっ…は、んぁ……」

 熱く猛ったカラダを上下させるたびに、ベッドのスプリングが激しくきしむ。
 細い髪や形の整った乳房が、重力に取り残されたかのように乱れて揺らぐ。

 やがて、筋張った
てのひらが彼女の腰をつかむ。
 そして彼も自らの腰を振り始めた。彼女よりも、ずっと激しい力で。
 
 突然の刺激に、彼女は細いカラダを弓なりに反らせる。
 そのとき上げた声は、とても人前で聞かせられないくらいに淫らなものだったに違いない。

 彼の猛りが――熱が彼女の奥を激しく擦りつけてくる。もっと激しく欲するかのように。
 まるで彼女を壊してしまおうとしているかのように激しく、荒っぽい感情が伝わってくる。
 
 嬉しかった。
 彼も同じ気持ちなのだ。

 嬉しい。
 すごく嬉しい。
 目の前にいる人が、自分と同じ気持ちであることがこんなに嬉しいなんて……。
  
 とうとう体が痺れて、彼女は前のめりの体勢になる。
 彼の顔に自分のそれを近づけ、両手で包みこむ。互いの吐息が届く距離。

 達するときは――彼の顔を見たい。

 自分の顔を見て欲しい。
 自分だけを見て欲しい。
 この世界であなたを求めてる人はたった一人――自分だけなのだと想って欲しい。 

 どうか、どうか自分だけを……。


「……っ……ぁ…っ……」

 今、自分は何て言っているのだろう。

 獣のように鳴いてるだけ?
 それとも彼の名前を呼んでるの?
 あるいは……何だろう?


 彼女の奥深くで、彼の猛りがいっそう膨らむ。
 彼の頂点が近い証拠。  

 もうすぐなんだ……。
 全身が総毛立つような期待と、若干の名残惜しさを噛み締めながら、彼女は甘い吐息を漏らした。 


 達するのを自覚しているのだろう、彼はよりいっそう腰の動きに熱を加える。
 背中に回してくる逞しい腕に応えて、彼女も彼の体にしがみついた。 


 夢想してきただろう、淫らな願望。
 心にしまっていた、いけない妄想。
 ずっと願ってた、自分が汚される夢。 


 そのすべてが現実になって――想像以上の衝撃をともなって、今まさに彼女の中に入ってこようとしていた。

 蜜を荒々しくかき回しながら、彼の欲望が彼女の中で暴れ狂う。
 いつもは冷静な彼女の思考が、甘い快楽で真っ赤に蕩けてしまいそう。
 
「…ふぁ…んっ……ああぁぁぁぁぁんっ!!」
 彼女の声は、すでに泣き声に近い。まるで赤ん坊のよう。


 何もかもが壊れてしまいそうになったそのとき――

 彼が口元で何かをささやく。
 
 
 その言の葉が、失いかけていた理性をつなぎとめる。

 言葉の意味を把握しかねて、
 それが脳に届いた瞬間に理解して、

 心の奥底にすとんと転がっていったそのとき――
 



 心が
千々ちぢに……。





 びくんびくんと痺れるカラダ。
 震える彼女の細い体を、力強い彼の腕が支えてくれる。

 だけど、落ち着いてきたころに気づく。
 彼の腕もまた、震えていたことに。――達したのだということに。


 自分といっしょ……。
 彼といっしょ……。


「………………」
 疲れ果てたのか、ぐったりとした動きで彼女は彼の暖かい胸板に頬をすりよせた。
 息は荒いけれど、彼女の表情は笑んでいる。

 
快楽ハチミツをたっぷり注がれて、彼女はとっても満たされていたのだから。 


 
 淫らな夢に酔いしれながら――今日も彼女は夜をすごす。
 大切な人といっしょに……。









 ――あえて、もう一度口にしよう。
 彼女らは、けが
れを知らぬ乙女であると。




【Good Night A Good Dream】


 


 

 

 Back / Top / Next


Top / Novel / Gallely / Link

 

inserted by FC2 system